「日本でも集団免疫あると言っていい」と見る専門家 抗体なくても免疫が有効に働いた例も〈AERA〉(AERA dot.)

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「日本でも集団免疫あると言っていい」と見る専門家 抗体なくても免疫が有効に働いた例も〈AERA〉(AERA dot.)
[MARKOVE] 人口の3分の2以上が感染すれば、それ以上の拡大を抑えられる「集団免疫」。日本でもすでにあると言う専門家がいる。一体どういうことなのか。AERA 2020年12月21日号は、免疫学の権威に聞いた。[/MARKOVE]
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日本でも集団免疫あると言っていい と見る専門家 抗体なくても免疫が有効に働いた例もAERA

Th2細胞部隊は「液性免疫」に関与するため、「Th2細胞が減れば抗体はできない」と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、完全な誤解です。感染症の時の抗体産生は、Th1細胞が主に援助しています。Th2細胞が「液性免疫」と呼ばれる所以は、Th2細胞が特異的に産生するインターロイキン-4(IL-4)と呼ばれるサイトカインにあります。IL-4の役割は特殊で、感染症で増加するIgGやIgAと呼ばれる抗体とは異なり、IgEと呼ばれる抗体を作りだします。このIgEが花粉症などのI型アレルギーを直接起こします。よって、「I型アレルギーの機序では、Th2細胞が液性免疫の主役」となります。一方、感染症で増加するIgGの産生はより複雑で、多くの種類の細胞が関与します。

じゃあ善玉抗体だけ測ればいいじゃないかという方法があります。

IgG型イムノクロマト法:IgGは感染後期、すなわち回復期から増加を初めて長期間保持されます。よって、診断には使用できませんが、感染歴のある人数を把握する疫学調査には有用です。また、賛否両論ですが、個人的には、IgG型抗体を持っていれば新型コロナウイルスに対して「守られ」そして「他人にうつさない」と思います。

感染流行時期から考えて、新型コロナウイルスによる死者が4-5月に最多になると推測されるため、この時期の超過死亡は重要な意味をもつのかもしれません。各都道府県から5月の死者数の速報値が出され、超過死亡について異なった意見が出されています。多くの統計学者が、「過去数年間の死者数を平均した値」と「今年度の値」の比較に警鐘を鳴らされていたため、専門分野ではありませんが私なりに調べてみました。人口動態統計によると、日本の死者数は、2015年が1,290,500人、2016年が1,308,158人、2017年が1,340,567人、2018年が1,362,470人、2019年が1,376,000人でした。毎年0.99%から2.47%の割合で死者が継続的に増えています。世界一の高齢化社会である我が国では、「老衰」による死者が増え続け、2016年には老衰は日本における死亡原因の第5位でしたが、2018年には第3位となっています。すなわち、感染症などの突然の出来事が無くても、超過死亡は自然に毎年増え続けています。つまり、超過死亡を解析するときは、自然増加の考慮も必要かもしれません。例えば、2015年の死者数と比べると2019年の死者数は6.63%増えています。また、2015年から2018年の死者数を平均して比べると、2019年の死者数は3.8%増えていることになります。2018年と比べると、2019年の死者数の増加は0.99%に留まります。すなわち統計学の先生方が言われるように、比較対象の選び方により値は大きく変わり、前年度との比較が最も誤差が少ないようです。

[予防接種は?]病原体が侵入すると数時間以内に自然免疫細胞軍が戦いを挑み始め、3日以上を経て戦闘のエキスパートである獲得免疫細胞軍が援軍に入り、強力なチームプレイにより病原体を完全に撃退します。問題は3日間の時差です。病原体が強いと自然免疫細胞軍は苦戦を強いられ病原体に有利な展開に持ち込まれてしまいます。よって、最初から自然免疫細胞軍と獲得免疫細胞軍を同時に投入することができれば、余裕をもって病原体を撃退できることになります。何故、獲得免疫細胞の参戦までに3日間が必要かというと、脳細胞のように勉強が得意でないので、敵の顔を覚えるのに3日もかかってしまうからです。よって、戦闘能力を失わせた病原体に一度顔合わせをさせる事により、病原体の顔を獲得免疫細胞に覚えさせておき、再び本物の病原体に出会ったら3日の時差なく獲得免疫細胞が即座に攻撃できるようにしているのが予防接種(ワクチン)です。日本では、インフルエンザ菌、肺炎球菌、ロタウイルス、結核、麻疹(はしか)、風疹(三日はしか)、水痘(水疱瘡)、流行耳下腺炎(おたふく風邪)、ポリオ、ジフテリア、百日咳、破傷風、季節性インフルエンザ、日本脳炎、A型肝炎、B型肝炎、ヒトパピローマウイルス(子宮頸がん)など多くの感染症に対する予防接種が義務化及び任意で接種されており、多くの人の命を感染症から守ってくれています。

これに対して、一部の専門家からは、ウイルスの特徴は免疫細胞に記憶されるため、抗体が減っても再感染時に免疫が働くとの見解が出されている。また、感染を重ねると、免疫が強化されて症状が軽くなるといった見方もある。

抗体は早期に産生されるIgM、その後に産生されるIgG、アレルギーで増えるIgE、そして粘膜で産生されるIgAに分類されます。粘膜と言えば口腔粘膜や腸管粘膜が代表です。よって、IgAは唾液や便中に多く含まれます。新型コロナウイルス感染では、IgGのみでなくIgAも血液中に増える事が報告されています(Varnaite R, J Immunol 2020, 9/2; Moderbacher CR, Cell 2020, 9/16)。また、アイスランドからの報告によるとIgGのみで無く、IgAの検出も可能な「pan-Ig」(ロッシェ社)と呼ばれる検査キットを用いる方が抗体の検出率は高いと報告されています(Gudbjartsson DF, New Engl J Med 2020, 9/1)。つまり、新型コロナウイルス感染では、季節性インフルエンザの様にIgGに代表される全身性の免疫ばかりでなく、IgAに代表される腸管の免疫も関与しているのかもしれません。 また、新型コロナウイルス感染者の息(呼気)には、腸内細菌叢の乱れを示唆するガスの変化が認められる事も10月24日に報告されています(Ruszkiewicz DM, EClinical Medicine 2020, 10/24)。

8月30日のCNNの報道によると、ブラジルでは、観光名所である世界文化遺産フェルナンド・デ・ノローニャ諸島に入島するには、「PCR陰性」ではなく「過去のPCR陽性」証明書を求めているようです。また、同時に「抗体陽性証明書」の提示も求めている事からすると、「免疫を既に持っている方に限定して観光地を解放」する新たな対策をとっているようです。挑戦的ですが、免疫学的にみると合理的かもしれません。今後、この島で新型コロナウイルス流行が起こらなければ、集団免疫の科学的根拠となるため注視が必要かもしれません。

抗体の寿命:新型コロナウイルス感染によりできた抗体は「どれぐらいの期間維持できるか?」については明らかではありません。新型コロナウイルスと同系に属すウイルスの中で、ヒトコロナウイルスに対するIgG型抗体は、1年間は維持され、SARSを起こした病原性の高いコロナウイルスに対するIgG型抗体は2年以上維持されるとの報告があります(Wu L. Emerg Infect Dis 2007 p1562)。また、麻疹(はしか)のように、「終世免疫」と呼ばれ抗体が一生涯維持される感染症もあります。中国武漢市の調査では、新型コロナウイルスに感染しても無症状であった患者さんは、症状が出た患者さんに比べてIgG型抗体の血中濃度が低く、そのうえ、退院後約8週で40%の患者さんの抗体が陰性になったと報告しています(Lung QX. Nat Med 2020 6/18)。IgG型抗体の半減期は長くても23日です。すなわち、一度血液中に放出されると23日で量が半分になるという事です。退院後約8週で抗体が陰性になったという事は、一度は抗体が作られているので、戦闘のエキスパートである獲得免疫細胞が援護に来たと思います。しかし、敵が弱いため抗体を短時間しか使わず、血液中に残っていた僅かな抗体が8週間で消えたのかもしれません。重要なポイントは、抗体に比べて、抗体を作りだすB細胞の寿命は半年から1年と長くなります。すなわち、「料理はあっという間に無くなりますが、その作り方を覚えた料理人はいつでも同じ料理が作れる」という事です。そして、B細胞は、記憶した敵に再び出会うと増え始め、増えた細胞は、その時点から寿命が始まります。すなわち、感染して1年以内に同じ敵に出会えば、敵の顔を覚えた子孫を残し続け、自然免疫細胞が苦戦している時には、親に代わり子孫たちが抗体を放ち援護してくれることになります。

抗体の量だけ測って、機能は測っていません。

こういう役なし抗体も新型コロナウイルスではできています。ですから単に抗体の量だけを見ても、本当にどの程度、正しい免疫ができたのか、よく分かりません。

どうも、このウイルスは免疫を起こす力が非常に弱いし、起こっても遅い。抗体だけを見ていると、判断が非常につきにくい。

自然免疫だけでウイルスを撃退することもあるから、抗体の量や陽性率だけを見ていても集団免疫ができているかは判断できない可能性があります。今回はそういうことが起きているのかもしれません。

木村:加藤勝信厚生労働相が15日、献血された血液で新型コロナウイルスの抗体を調べたところ陽性率は東京都の500検体で0.6%、東北6県の500検体では0.4%だったと明らかにしました。

ワクチンがない現在では感染がじわじわと広がって集団免疫を成立させるか、ワクチンが完成するのを待つしかないような感じであり、日本ではまさにそのような戦略を取っているとしか思えない節もある。

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