教員採用試験の倍率低下 「教員の質」問うより熱量低下が疑問?〈AERA〉(AERA dot.)

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教員採用試験の倍率低下 「教員の質」問うより熱量低下が疑問?〈AERA〉(AERA dot.)
[MARKOVE] 近年、教員採用試験の倍率が低下している。1980年ごろ大量採用されたベテランが退職期を迎えていることも影響しているようで、地域によっては2倍を割り込むところも。となれば教員の質が問われがちだが、問題[/MARKOVE]
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教員採用試験の倍率低下 教員の質 問うより熱量低下が疑問AERA

現役合格は過去最高の22人。昨年の教員採用試験で、沖縄大学(那覇市)のこども文化学科が残した実績だ。学生を指導する池間生子教授はこう話す。

文部科学省が毎年発表している「公立学校教員採用選考試験の実施状況」によると、2012年度の競争倍率は小学校4.4倍(前年度比0.1ポイント減)、中学校7.7倍(同0.1ポイント減)、高校7.3倍(同0.4ポイント減)、特別支援学校3.4倍(同0.1ポイント減)などとなっていた。関係者以外がこの数値を見れば、なかなか狭き門だと思うだろう。

そうした状況の下で、採用試験というシステム自体が教員の質の保証に役立たなくなっているという指摘もある。本欄の前任担当者である坂本建一郎氏もメンバーである研究グループ(研究代表=布村育子・埼玉学園大学准教授)による「教員採用の市場化をめぐる、大学・教育委員会・教員採用試験産業のダイナミクス」だ。

「地域によって計画性を欠いた採用活動が行われた可能性や、特別支援教育に対するニーズなどで、これまで以上に教員の頭数が必要とされるといった実情が、ここ数年の低倍率につながっている可能性もあります」

ただ、同省は「業務負担が重いからといって不人気かどうかは分からない」としており、21年度にも教員採用試験を受けない理由を探るための調査を実施するという。

近年は業務負担が多い教員よりも、採用状況が好調な民間企業に流れがちとの見方もある。新型コロナウイルス禍の学校現場では消毒作業などの負担も重く、人手不足を訴える声は多い。文科省はコロナ禍をきっかけに外部人材の登用支援を促進している。22年度めどに小学校高学年で「教科担任制」を導入するなど、教員の負担軽減を進めて門戸を広げたい考えだ。

「大学では本当に教員を目指す人たちが一緒に勉強する自主的な会として試験の対策講座がありますが、この講座への参加者がどんどん増えていったのが一番の要因と考えています」

言うまでもなく教員の質は、子どもの教育を左右する。保護者や国民の期待に応えるためにも、建前や政治的思惑だけでなく、実証的かつ本音の議論が必要なように思う。

小学校では児童それぞれにきめ細かい指導をしやすくする目的で、21年度から5年かけ、全ての学年で「35人学級」に移行する。同省は小中の教員免許を両方取得する場合に必要となる教職課程の単位の総数を減らすほか、中学校の免許を持つ教員が小学校の免許を取る場合の要件を緩め、小学校教員になりやすい環境を整える。

文部科学省は2日、都道府県教育委員会などが2019年度に実施した公立小学校の教員採用試験の倍率が過去最低の2.7倍となったと発表した。前年度は2.8倍だった。高年齢層の大量退職を補うために採用人数を増やしているが、民間企業の人気が高く、採用倍率の低調が続く。

調査対象は教員の採用を行っている47都道府県と政令指定都市など。小学校教員の採用倍率は全国平均で2.7倍と、調査を始めた1979年度以降過去最低となった。山形、福島、富山、山梨、山口、福岡、佐賀、長崎、大分、宮崎の各県と北九州市、合同で採用している広島県と広島市の13自治体では、倍率が2倍を下回った。

公立小・中学校に限って見ると、2011年度末現在の平均年齢は44.4歳。54歳をピークに50歳以上が4割を占める一方、40代は3割を切り、30代は2割ほどしかいない(文科省調べ)。新規採用教員に近い立場の中堅層が薄い上に、多忙化により他の教員に構っている余裕は昔ほどなくなっている。若手教員が悩みを抱えたまま、誰にも相談できず孤立している姿も珍しくない。

教員採用の1次試験が競争テストである以上、受験者は教員になりたい一心で過去問を解き、各自治体の「傾向と対策」に沿った勉強をするようになる。採用後に指導力を発揮できるような勉強は、つい二の次になりがちだという。いくら2次試験で人物本位の選考をしようとしても、1次合格者の質がペーパーテスト偏重では限界がある。教員採用の拡大を見越して大学側が「面倒見のいい」採用試験対策に力を入れ過ぎるのも、望ましい教員を育てるという教員養成機関の本来の在り方にとっては逆効果にもなっている。

「平成24年度 公立学校教員採用選考試験の実施状況について」

その上で採用数の動向は、退職者がどれくらい出るかによっても左右される。世間では2007年度から2009年度にかけての「団塊世代の大量退職」が社会問題となったが、子どもを相手とする教育の世界では、団塊世代の子どもである第2次ベビーブームに対応して大量採用された教員が、まだ50代として残っている。教育の世界では5~10年遅れで「大量退職」問題が進行中なのだ。

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