無理して移すとシャッタースピードダイアルがカメラの底にきてしまう
オリンパスは1936年からカメラの製造、販売を手掛ける名門メーカーだ。1959年には小型軽量のハーフサイズカメラ「オリンパスPEN(ペン)」を発売。1970年代には当時「世界最小・最軽量」とされた「OM-1」「OM-2」などの一眼レフカメラを発売。初代ペンやOMシリーズは人気を呼び、ニコン、キヤノンに次ぐ第三勢力の一角を占めた。
いわゆる過疎地を見つけて、機能の一部をそこに移せばいいじゃないかという発想がまず浮かびます。ところが、やっぱり過疎地なんですね(笑)。機能が連携できません。カメラの上から下まで通っている駆動軸を使えば駆動させる力の伝達は、過疎地でも可能なことがわかりましたが、シャッタースピードの調節などのメカニズムはなかなか移せません。無理して移すとシャッタースピードダイアルがカメラの底にきてしまう。カメラを逆さまにしないとシャッターがコントロールできない。三脚をつけたら動かせないなど問題は多いが、とにかくいっぱいスペースがあり、移動させるとしたらここしかない、というところまで辿り着いたんです。辿り着いて、力のコントロールはそう難しいことじゃない。問題はシャッタースピードとほかとの連携なんです。この下のものを上に持ってくる方法論として、この前側にシャッターダイアルを持ってくる。これしかないぞ、シャッターダイアルを持ってきた。OMだけですね、こんな所にシャッターあるのは。
オリンパスは、レンズ交換型デジタルカメラではとても保守的な戦略を貫いてきた。03年に、自社で開発し4/3型の撮像素子を採用した「フォーサーズシステム」引っ提げてデジタル一眼レフを発売。08年に、拡張規格「マイクロフォーサーズシステム」を発表。ミラーレス一眼市場に、パナソニックとともに先鞭をつけた。マウントの変更と、一眼レフからミラーレスへの大転換は遂げたものの、レンズ交換型カメラの撮像素子サイズは03年以降ずっと4/3型を採用し続け、今日に至っている。
カメラ業界で仕事をしている身としても、カメラファン・写真愛好家としても、業界の未来像に対しての危機感は筆舌に尽くしがたいものがある。業界は今後も厳しい状況が続いていくが、微力ではあるもののカメラのよさを伝えていけるように活動していきたい。
カメラ市場の縮小ペースが速まっている。カメラ映像機器工業会(CIPA)の統計を見ると、2018年は前年同月比で1―2割程度減っていたカメラの出荷額が、19年は減少幅が同2―3割に広がった。カメラ大手のニコンやキヤノンは19年度の映像関連事業の見通しをいずれも下方修正しており、環境はより厳しさを増している。
同社によると、「オリンパスは1950年に世界で初めて実用的な胃カメラの試作機を開発し、世界最先端の消化器内視鏡製品を産み出し続けることで圧倒的な世界トップシェアを維持してきた」という。
日本は内視鏡カメラの技術だけでなく、内視鏡カメラを使った診察や手術などの医療技術でも世界トップレベルとされる。その多くを支えるのが、顕微鏡やカメラを通じて培われたオリンパスの光学技術や電子映像技術というわけだ。
フィルムカメラ時代、小型で機動力のあるレンズ交換型カメラといえば、オリンパスの一眼レフ、OM-1だった。小型・軽量はある意味でカメラの正義でもあり、これを貫くための4/3型という位置づけだ。完全にデジタルに移行した現在でも、このOM-1の成功を引きずっているのかもしれない。
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竹内康雄・取締役代表執行役社長兼CEO・最高経営責任者は、昨年から複数のメディアに対し事業売却をイメージさせる発言をしており、一部では時間の問題ともいわれていた。映像事業には、カメラのほかにICレコーダーや双眼鏡など、一般消費者向けの製品群が含まれている。今回の決定で、同社はコンシューマービジネスから撤退することになった。
だが、最新のミラーレスの多くは、メディアの伝え方も単調でよくないところがあると思うが、AFの測距点数だったり、連写速度だったりと、数字で表現できるわかりやすいスペックを伝えることを重視しすぎていて個性を感じにくく、ライト層に対してカメラの魅力を訴求できていない面がある。市場規模が徐々に小さくなっていく中で、性能で勝負できないカメラはコアなカメラファンから注目を集めにくいところがあり、どうしてもスペック訴求重視になってしまうのはわかる。だが、ライト層にとっては2世代くらい前から一眼カメラはすでに十分な性能を持つようになっていて、メーカーが期待するほどスペックに価値を感じなくなっているように思う。製品のプロモーションを含めて、スペック以外のところでライト層の買い替え需要を喚起するような取り組みはもっとあっていいはずだ。
2019年11月に発売されたミドルクラスミラーレスカメラのOM-D E-M5 Mark IIIは、外装がエンジニアリングプラスチックで、マグネシウム合金製だった先代機種Mark IIよりも強度で大きく劣っていた。それに、縦位置グリップや防水プロテクターなどの専用アクセサリーもなく、拡張性がほぼ皆無だった。
人間ドックなどで胃や大腸などの内視鏡カメラの検査を受けたことがある人なら、医師が操作するカメラにオリンパスのロゴが書かれているのを見たことがあるだろう。
しかも、これからは新型コロナウイルス感染症と共存しながら生きていく「withコロナ時代」が本格的に始まると言われている。「withコロナ時代」では生活スタイルが大きく変化し、生活必需品に対するニーズが高まるいっぽうで、カメラのような嗜好品に対してはその価値がさらにシビアに評価されることになるだろう。さまざまな分野で価値観が変わりつつある中で、カメラメーカーもメディアも、生活を豊かにするツールであるカメラの価値を、コアなカメラファンだけでなく、もっと幅広い層に伝えていく努力をすべきだと思う。
4/3型センサーは適度に「小さい」ためピントの合う範囲が深めで、動画との親和性が高いと評価する向きもあるが、オリンパス自身は動画に対する取り組みは及び腰だった。一方マイクロフォーサーズの盟友パナソニックは、早くから動画を意識した製品をラインアップ。一部プロ向け機材にもマイクロフォーサーズを取り入れた。最近では動画版のブログを配信するVlogger向け新製品を投入予定だ。小型シネマカメラの豪・Blackmagic Designは、マイクロフォーサーズ規格を採用、ハイエンドの動画撮影市場で一定の評価を獲得している。
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